たまには趣向を変えて、コーヒーブレイクに「読み物」を。もう冬はすぐそこなのですが、夏のお話です!すみません(^_^;)
それでは、はじまり、はじまり~~~~~
蝉が鳴いている。もうすぐ夏休みだ。昨日降った雨なんて忘れるくらい、グランドは乾いている。4回裏、2アウト満塁。バッターは背番号1番のピッチャーだ。三年生。僕だったら‥
昨晩、父さんに叱られた。「何故背番号を貰えなかったか考えてみろ」と。そしてスキカルで丸坊主にされた。僕は一年生のうちから部活でも良いポジションをもらっていて何となくやってきた。
だけど春くらいから脚の筋肉が硬直するという厄介な怪我で走ることがままならなくなってしばらく軽いトレーニングしか出来なかった。やっと怪我が治った。けれど何となくまた練習に加わり以前と変わらない僕だった。
そして、今回の試合で監督から背番号が貰えないことを告げられた。正直、ショックだった。今回の試合は随分前からエントリーが始まっていて僕が練習出来ない時期にエントリーがすんでいた。それを僕は仕方がないと言う理由として自分に言い聞かせていた。
監督が何故僕に背番号をくれなかったか、父さんが何故あんなに怒ったのか。僕は下手くそな散髪でまだらになった頭を鏡で見ながら考えた。幼稚園以来だ、こんなに泣いたの。
クラスメートには絶対に見られたくない。カッコ悪すぎて。
おじいちゃんとお姉ちゃん(父さんの妹でたぶん叔母さんと呼ばない方がよいと思うので)が試合を見に来た。僕は出ないのに。ベンチにも入れず応援席なのに。恥ずかしかった。
試合は始まった。僕らのチームの先発ピッチャーは肘を痛めていて三回まで投げたけどコントロールが効かなくなり監督がピッチャーを交代させた。
球の速さが相手チームとまるで違う。立て続けにヒットを撃たれて満塁になった。相手チームの背番号1番の三年生ピッチャーの打球はレフトの頭上を越えて三塁打を放った。
打球はバットの芯を捕らえてとても良い音がした。拳を上げて走る姿は得意げだった。
僕は思い切り声を出して応援した。最初から最後まで、自分が出られない分、腹の底から声を出して気付いたら声が枯れるほど応援していた。
5対2。負けた。無性に悔しかった。
家に帰ると父さんに「その頭、似合うぞ!」
と言われた。ちえっ、と思いイラっとしたけど何となくスッキリしていた。
そして母さんのスマホにお姉ちゃん(くどいようだけど父さんの妹で叔母さんと呼ばない方がよいと思うので)からメールが僕宛に届いた。
脚の負傷でブランクもあり、背番号のない選手。悔しかったでしょう。けれどマウンドに入らず、学ぶこともあります。昨日はたっちゃんのこれからの野球人生?!に必ず良い経験になったはずです。
それから、たっちゃんに期待するパパやママ、先生は時にたっちゃんを厳しく叱ります。忘れてはならないのは叱るひとは叱られる本人と同じくらい、心が痛いのです。その人を大切に思えば大切に思うほど心が痛いのです。
皆んなから愛されているんだね。
照れ臭いのでメールを見せてくれた母さんには「おう!」と答えておいた。
明日の朝練は誰よりも早く行こう。
~おしまい~
以上です。変り種ですみません、、、。 【間瀬】