こんにちは、岸です。
誰憚ることなく、趣味の1つは読書と公言しています。
正真正銘の読書です。
本を読んでいると、この人の文章はうまいなぁと感嘆させられる出合いがあります。
小説家で言えば、豊富な語彙と直喩や隠喩の用い方が絶妙な宮部みゆきさん、それ以上でもそれ以下でもない正確無比な日本語を操る三浦しをんさん、とても繊細な表現が巧みな宮下奈都さんなどなど。
今週ずっと読んでいた本があります。
小説ではないのですが、この著者の文章もまた秀逸です。
当然かもしれません、著者は伝説の国語教師から直接薫陶を受けた方ですので。
この本。文章の力に惹かれて、読むのはこれが2回目でした。
『優劣のかなたに -大村はま60のことば-』 (苅谷 夏子・著、筑摩書房)
大村はま先生は、明治の終わりに生まれ、戦前・戦中・戦後を通じて70代半ばまで現役で、その後も98歳で亡くなる直前まで講演活動などをされていた、伝説の国語教師です。
もちろん実在の人物です。
この本は、はま先生が遺した言葉の中から著者が厳選した60個について、それを紹介し、著者が解説を加えるという構成になっています。国語教育もしくは広く教育のあり方に関するものが多く含まれますが、中には人が生きる上で普遍的に大切にしていきたい考え方・処し方などもあり、人間性を養う上でも示唆に富む内容です。文章だけでなく書かれたその内容自体にもとても味わい深いものがあります。
※本の詳細はこちら(筑摩書房のWEBサイトに移動します)
http://www.chikumashobo.co.jp/special/yuretsu/
著者の苅谷さんは中学生の時に、当時60代のはま先生から直接国語を教わったそうです。
はま先生の晩年には、そのご縁で(?)10年ほど一緒に活動もされていたとのことですので、はま先生の文章に日常的に浸り、接しておられた方なのだと思います。
この本は、こんな文章から始まります。
「平成十七年四月十七日、国語教師大村はまが、ふいとその生を終えた。早朝の電話でそれを知り、ぽっかりと中空に浮いた喪失感に、圧倒された。」
のっけからしてやられました。こんな文章で綴られた230頁に浸っていたら、自分の日本語までもが研ぎ澄まされていくような気がしました。とんだ勘違いですが(笑)